「最後にお会いしたのはいつでしたっけ?」
その声が耳に届いた時、
まさにちょうど「真っ青な本」を読んでいた。
秋である。
衣替えのタイミングを逸しておりなんだか世界に一人夏のままだった。
即座に問いかけに反応したと悟られぬように、
わざと間を空けてから視線を上げる。
手にしていた真っ青な本は開いたままそのままの姿勢をキープしていた。
小さく首から肩の辺りを動かして、まず遠くを見る。
奥のシェルフにフォーカスした。
カメラのズームのようにジッジィーと心に唱えてみる。
視線の端で声の主らしき輪郭はとらえていた。
平積みの新刊本の島の向こう岸へはまだ真直ぐには見定めない。
そろそろ夕方に差し掛かったのだろうか、
学生服やらスーツ姿が目立ち始めていた。
だとするとかれこれ半日本屋いる事になる。
そう思いそう言えばと下半身に疲労感がじわじわと警報した。
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