エレベーターが昇ってくるのを待つ間、
洋平はカバンの中身を頭でおさらいしていた。
それはすっかり習慣となっている。
マンションの最上階に引っ越してから感じる数少ない不満のひとつが、
エレベーターで時間を食う、という事だった。
それはマンションの最上階に住んでみて初めて知る不満。
扉が開いた。
中から微かな煙ともわんと春っぽいのあおっぽい匂い。
洋平が乗り込むと隅に筍が生えていた。
空き缶ほどの小さなタケノコはそこに置いてあったのではなくて、
たしかにそこから顔を出したばかりなのである。
襟を大きく開いていたのですぐにわかった。
エキストラの中に彼女を見つける。
エンディングまで待てずに電話をかけた。
「きょうはあついね」
エゴイストばかりのカフェでピラフを食べる。
遠足から帰ってからというものずっと眠っていた。
笑顔を惜しみなくこぼしながら雨の中に立っていた。
「はるだってのにさむいよね」
餌をやろうと外に出る。
海老が水溜まりで跳ねた。
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