鼻からすうと息が抜けた。
程なく。
寝息が緩やかなリズムにのっている。
眠りに落ちた。
そうしてようやく表情から他者への意識が消える。
それは安らかとも違う “ありのまま” 。。
あまりに無防備にすやすやと呼吸するイキモノ。
私はニンマリと腕の中を観察している。
そして私の頭は増々冴えていった。
12時を過ぎたなら日付は変わり月も変わる。
今それを知る術も必要もなかった。
私は分厚いベットから脱出した。
苦労ばかりのこの世界に呼び覚まさぬよう秒速10センチでもぞもぞと動く。
降り立つ素足に絨毯が触れて安堵した。
ここからは高級な長い毛足が余計な気配を吸い込んでくれる。
スリッパを放棄したつま先で衣擦(きぬづ)れの様な些細な音をたてながらベットの足もとにまわった。
ホテルの備品で散らかるテーブルの上で LED の静かな点滅がメールの着信を知らせている。
携帯電話と間もなく読み終える文庫本を手に取った。
バスルームに入る前にベットサイドの電気をギリギリまでしぼると部屋に充満するしんとした空気がカレをクィーンサイズのベットごと包み込む。
深夜に降り始める雪のようにきっと明日の朝、カーテンが開かれるまで静寂がやさしく降り積もってゆく。
ようやくカレに訪れた平穏にモリノネコは胸が満たされた。
つくづくカレを好きなんだろうと思った。
部屋に戻った。
脇からカーテンの向こう側に入る。
夜は明るかった。
ガラス窓の端が曇っている。
外は寒そうだった。
新しい月が始まる。
このまま年末へと向かっていく。
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