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今日も地球がまわるからワタシはぐるぐる夢をみる、、 ふわふわ浮かんだ妄想を短編小説に込めました、、ユメミルアナタへ愛を込めて☆             
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鼻からすうと息が抜けた。


程なく。

寝息が緩やかなリズムにのっている。
眠りに落ちた。
そうしてようやく表情から他者への意識が消える。
それは安らかとも違う “ありのまま” 。。
あまりに無防備にすやすやと呼吸するイキモノ。
ニンマリと腕の中を観察していると私の頭は増々冴えていった。

何時だろう。。
12時を過ぎたなら日付とともに月も変わっている。
ならば今年も四分の三が終わった事になる。

すっかり眠気の失せた私は分厚いベットから脱出した。
苦労ばかりのこの世界に再び呼び覚まさぬよう秒速10センチでもぞもぞと動く。
ようやく降り立つ素足に絨毯が触れて安堵した。
ここからは高級そうな長い毛足が余計な気配を深く吸い込んでくれる。
スリッパを放棄したつま先で衣擦(きぬづ)れの様な些細な音を心地よくたてながら私はベットの足もとにまわった。
薄明かりを背負った暗がりでカバンから本とペットボトルを探る。
ホテルの備品で散らかるテーブルの上で LED の静かな点滅がメールの着信を知らせていた。
携帯電話と飲みかけの茉莉花茶そして間もなく読み終える芥川龍之介の文庫を手にすると、
背後からくかぁと大きな寝息がひとつ聞こえたので一応ベットを振り返った。
薄い掛け布団の山が動くのを見て冷たいシーツの肌触りが頬によみがえる。
それは悪くない部屋に着いた2時間前へのジャンプだった。

私は北欧を思い出す。
私が初めて外国に触れた旅。
長いフライトの末に飛行機から一歩降りると冷んやりと北欧に包まれた。
それが冷たいシーツの記憶といつもダブる。
ホテルのまっさらなシーツがいつも何度でも代え難い初体験とリンクした。


ベットの上の寝息は再び規則正しく繰り返された。
ゆっくりともう一段深い世界へと落ちてゆく。
私はペットボトルを左手に持ち替えて乾燥した唇を濡らしてジャスミンティーに蓋(ふた)をした。

バスルームに入る前にベットサイドの灯りをギリギリまで落とすとじっと固まった空気が際立った。
そして私はベットが遠のいたように錯覚する。

深夜に降り始める雪のように、、
これから明日の朝、カーテンを開けてしまうまではしんしんと闇の粒が降り積もってゆく。
クィーンサイズのまん中のコブもやさしく静寂に包まれている事だろう。
胸が満たされたまま私はバスルームのドアを静かに開けた。


まだ使っていないバスタオルをタイルの床に敷いた。
化粧用のスツールを引き寄せてそこに寄りかかる。
石から伝わる硬さと冷たさが深夜の緩んだ身体に心地よかった。

早速、点滅する LED に急かされて携帯電話をかちゃと開くとメールの送り主はやはりカタオカサチコだった。




部屋に戻った。
脇からカーテンの向こう側に入る。
夜は部屋のなかよりも明るかった。

外はずいぶん寒そうだった。
ガラス窓の端が曇っている。
指先で触れるとちくと冷たさが伝わった。


新しい月が始まる。
このまま年末が追いついてきて足早に今年が駆け抜けて行く。
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