昔話か。。中澤茶之助はかつての先輩に呼び出され学生時代を過ごした懐かしいだけの街に近づいていた。近づくにつれて甦る記憶は全てとうに昔話である。この街の変化は今もスピードを緩めていなかった。仲澤茶之助を乗せた電車は定刻よりやや遅れて渋谷駅に到着した。それでもまだ約束の時間よりは早い。ごとんとドアが一斉に開くとほぼ全ての人が吐き出される。中澤茶之助は流れに身をまかせホームへと飛び出した。歩きながら携帯の電源を入れる。優先席の付近で執拗なオレンジの警告に負けて切ってあった。
新宿寄りの階段を下りようとした時、時刻は19:42であった。ゆっくりし過ぎの人の流れ。ようやく下まで来ると懐かしさが膨張した。くの字の改札を抜ける。中澤茶之助はとうにはじまっている夜に1歩踏み出した。
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