クネクネで砂賀淳子の人生は少し変わった。
「え、、捕まえたのか?」
庫太朗の向ける視線には疑念の奥に確かな羨望の光が宿っていた。
嫁からの思いがけないニュースに、
つぶらな夫の瞳がはっきりと潤い、その日から態度が変わった。
端的に言えば、ようやく私を大人扱いし始めた。
「こっちの方がいいだろ」などと庫太朗が何でも決定していたが、
「どう?」なんてこっちの意見を取り入れたりもしだした。
それはそれでいいんだけど、、
ちょっと面倒臭いなぁと元来「お任せ」な砂賀淳子は思い始めていた。
クネクネ “らしき” ものを捕まえた日は晴れていた。
自転車だったのでそう憶えている。
そのまま自宅に立ち寄って魔美子さんに見せた。
10才年上であるが義妹である魔美子さん。
弟の職場の先輩で去年まで経理を担当していた。
弟が朝礼中に失神したのをキッカケにお近づきになり、
あれよあれよと半年前に結婚した。
という様な事が披露宴で紹介された。
13才年下の旦那を持つ新妻は寿退社後、
今は夕方から週に3〜4日熱帯魚屋でパートをしている。
全体的におっとりしている砂賀家に入って、
なにかとシャープにテキパキと身をこなす魔美子さんは、
余計に際立ち明るいお人柄、
そして何より酒豪である事が砂賀一族に気に入られてるが、
その点、下戸の庫太朗には不運だった。
あっという間に確固たる “居場所” を確保した魔美子さんに対して、
酒だけが決めてではないだろうが、
庫太朗は未だにいまいち親戚家族にウケが悪い。
長年お姉ちゃんの欲しかった砂賀淳子はことさら彼女になついていた。
雑学にも長けており、
砂賀淳子は何かっていうとマミコさん、マミコさーんと慕っていた。
そして、長男の嫁を持った
早速、家に帰り簡単に庫太朗の夕飯だけ用意するとパソコンに向かった。
クネクネで検索。
99万3千件のサイトにヒットした。
ざっと見るのに7時間かかり、
自分が捕まえたものが世間を騒がすクネクネではない事が判明した。
砂賀マコは目の前のスチールのクッキー缶を見た。
クネクネは取り急ぎヨックモックの缶に入れてフタをしてある。
とり急いで缶から出され散らかる小袋に手を伸ばし食べた。
何も考えずにさくさくと6つ食べたところで、
無性にコーヒーが飲みたくなったので、カラを握り台所に立った。
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