昨日、朝から降り続いていた雨がようやくやんだ。
時刻は午前2時。
視界にはひと1人車1台見られなかった。
ワルくない “ぽつり” の中で、
天竺弘明がワイパーを止めると、
大げさに静寂がしんとのしかかり、
世界が一層孤独となった。
カーステレオは20分前に切ってある。
遠くの信号が黄色に変わりブレーキをゆっくりと踏み込んだ。
久しぶりの赤信号が眩しかった。
天竺弘明が運転席の窓を全開にすると、
一拍置いて冷えた空気が澱んだ車内に流れ込んだ。
ふがふがと鼻を利かせるもまだ “潮の香” はしない。
もうだいぶ海に近づいているはずだったが、
見渡す世界ではまだ雨に湿った空気がじっとたたずんでいた。
霧に包まれながら “なす術” がなかった。
金魚すくいがクラスで流行りだしてから、
大賀見謙乃介の人気は急上昇していた。
成績はクラスの平均より2人上、
つまり “中の上” 、
身長は女子の言うところの最低ライン 170cm を 2mm だけオーバー。
これも “中の上” 、
よくよく見れば “中の上” といった顔立ち。
クラスで5番目くらいに大人しい男は、
これまで謎の存在だった。。と言うか、完全にノーマークだった。
キングと名乗る初老の男を助手席に乗せた。
木の実と呼ぶには大き過ぎるものがなっている。
黄身だけを使った と白身だけを使った が目の前に置かれた。
料理を習い始めてから玉河
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