胡椒の瓶からオッサンが出て来た。
王だと言っている。
オッサン出たての胡椒を使うのはやめてラーメンは素で食べた。
ぼわと煙とともに出てて来たのではない。
んしょんしょと懸命に這い出て来た。
その様子を見て寛容な野梨子ケンドールでも使うのを躊躇した。
大方食べ終わり汁の底に残ったメンマを丁寧にかじる。
がりがり がりがり
メンマは野梨子ケンドールの密かな好物だった。
メンマあっての「好きな食べ物はラーメン」だった。
用意しておいた紙袋を茶山くんに手渡した。
コーヒー飲んでく?
茶山くんは申し訳なさそうに首を振ると右手を差し出した。
野梨子ケンドールは口許で小さく微笑み首を振った。
懸命に小さくお洒落に、なんとか首を振った。
茶山くんが小さく微笑む。
るるると携帯がやさしく点滅する。
胸が張り裂けてどうやら身体の中にどろりとしたモノが流れ出た。
吐き気がしてラーメンの鉢に吐き出す。
恋心なんだと思う
カップ焼きそばのお湯を捨てながらようやくそう結論付けた。
転がる子供