新宿は雷雨。
夕方のニュースが始まった。
タイトルバックに見慣れたJRの出口が映る。
大勢が雨宿りしていた。
(今日あたり魔女が出そうだな)
映像がスタジオに切り替わるとミヤコはテレビを消した。
ミヤコは大雨の日に裏の川に行く。
ゴールデンタイムがいい。
夏なら昼間の曇りから夜の曇りへの移るとき。
人が少ない時間。
世間がテレビを観て、
食卓を囲んで、
ミヤコは一人取り残される、
そんな時間に行くのが好き。
傘を差して、窓の灯や街灯を映す流れを見る。
傘の中でたったったったったと打つ雨音に包まれて黒い水に大声を出してみる。
歌などうたってみる。
本当の魔女がドーナツを買う為に雨中のサザンデッキにいる。
そんな情報を着信し荻窪を出た。
都内で乾いている部分は皆無。
そんな湿った東京の日だった。
本当の魔女と都庁を目指した。
「あたしトチョウがすきなの」
西新宿は眠り始めている。
昼の生き物はふらふらと駅へと向かうと、
夜の生き物が一人二人と現れた。
三人四人、
五人六人、
黒いそいつらは全員同じに見えた。
赤く燃えていく東京。
下ネタばかりのラジオ番組が状況を悪化させていた。