鳥の国に来た。
朝。
いつもの風景。
定刻に通勤快速がホームに滑り込む。
連なった銀色の箱は規則的に減速しやがてピタリと停車した。
目の前でドアが開こうとした時、
砂賀庫太朗は乗車待ちの列を外れると列車を見送った。
この日。
奥さんの “元気” を探し出すために砂賀庫太朗はズル休みを決めた。
砂賀葉子の元気がなくなったのは
ふらふらと今し方(がた)上って来た階段の人の流れを逆流する。
特急のホームに移り少し迷ってから会社に電話を入れた。
仮病の初演技の相手は総務の須木田さんだった。
見破られただろうか。。
ベンチに座ると携帯の電源を切った。
鳥の国に来るのは15年振りで2回目だった。
様変わりしていた。
東京に住んでいて鳥の国について知る事は難しい。
踏み入って違和感を感じた。
その原因を辺りをじっくり観察しながら考えていると。
そういえば、と気がついたのは鳥が飛んでいない。しばらく見上げていても鳥影が視界を横切る事はなかった。どうやら徐々に首都の中心エリアでは飛行が全面規制されているとのことだ。代わりに交通網が発達していた。中でも地下鉄はずいぶん充実していた。天気も良いのでとりあえず歩く事にした。ビル間に大きな公園が見えるとぱらぱらと雨が額に落ちた。予感を信じて近くの屋根に入ると途端に本降りとなった。ゲリラ豪雨だった。最近、新聞紙面を賑わす現象に鳥の国で出会(でくわ)した。
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