NewYork から東京に戻ってからも瑞玉野梨子の胸はざわざわと騒々しかった。
意味もなくふらふらと部屋を歩き回っている。
ざわざわざわざわと邪魔くせぇなと思って。
行く気もないのに旅行のパンフレットをぱらぱらと眺めてみたりする。
以前1度だけ使った旅行会社から冊子がちょくちょく届く。
季節の変わり目となると分厚いカタログの数冊入ったビニールのパックがでんと郵便受箱にねじ込まれている。
そしてあの人を観に NewYork へと行ってきた。
あきらかにその所為である。
仁志本くんと別れてからそのまま帰らずに土手の石段の傍で寝っ転がってるとカエルが2匹現れた。石段にちょこんと座る2匹。大きさの違いと会話の口調などからどうやら2匹が兄弟であると判断した。「やっと海に着いたな」「あれが海かすげぇ」あれは川よと思わず言ってしまった。ぎょっとこちらを見てから兄らしき方が言った。「オレ海まだだから」「オレも」弟も続いた。兄弟は照れてからすぐにがっかりした。なんだか悪い事をした。じっと背中と脇の下に汗をかいた。
虹色のカエルくんが始終ニヤついているのも分かる。
1週間降り続いた雨は8日目に晴れたと思ったのも束の間給食の途中から空は曇りだし食べ終わる頃にはしとしとと水たまりに波紋が出来始めた。
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