蜜を集めていると中年の女性に大根で尻を叩かれた。砂賀葉二は幼少のひとコマを思い出していた。社長の “お言葉” は続いている。うとうとと首が脱力をし始めると、例によって脳裏に他愛無い過去がからからと映写された。
ミドリさんから久しぶりに手紙が届いた。すらすらっと書いてあるのにとっても主張してくる筆書きの宛名を見て、もしやと思ったら案の定ミドリさんからだった。丁寧に封を開けるとふわと懐かしい匂いがする。中には2つ折りにされた和紙のカードが1枚入っていた。色々な繊維をスいてみてはベランダの窓に貼付けて和紙を手作りしているミドリさんを想像した。
見覚えのない徳利が洗い桶にあった。手に取るとささやかに重い。何かの存在感を中に感じると無性に水を入れたくなった。でもそっと戻す。
鳩尾の辺りがふいに苦しくなってふと文庫本から視線を上げると、案の定、タイプの男が向かいの座席に座っていた。
三毛猫をうちの母はミケランジェロと呼んだ。本当の名前はトラである。「それもねぇ。。だって三毛猫なんだよね」とボーイフレンドは私の名付けセンスにも不服そうであった。
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