「ぐもーにんぐもーにん」
お知らせさんが久しぶりに現れて、
ルームメイトと一晩かけて完成させた静寂はいつもよりも若干早めに雲散した。
今朝は英語の気分だったんだな、などと思いながら、
ここここここと離れて行く木靴の音に耳をすませていた。
珍しく頭がすっきりしている。
出かけてみようかな、などと早速お知らせさん効果がメンタルにあらわれつつ、
再び静寂が結晶するのを待っていると、消えゆく木靴に蝉の鳴き声がオーバーラップした。
不意に顔を上げる。
案の定、ドアが薄く開いていた。
暗闇とカラりと乾いた涼の気がどんどん外に漏れている。
やれやれと気分はぐるりと転換した。
カラダ中の電源をオンにして未だ眠りの中の筋肉に微弱から電気を送っていく。
ながら手探りで目覚まし時計をつかんだ。
暗さで針が読めなかったがとりあえずアラームを切る。
痛めぬようゆっくりと力を込めて腹筋の要領で上半身を起こした。
ボロベットのスプリングの軋みの小さいポイントを辿りながらベットの縁に腰掛ける。
暗闇のぞろぞろと出て行ってしまった半闇に視力は馴染んでいた。
向かいのベットのルームメイトは背中をこちらに向けて壁際にぴたりとカラダを寄せている。
どうやら、お知らせさんの登場にも覚醒しなかったようだ。
運の悪い奴。
ルームメイトは先月モールで買ったあの馬鹿に長い枕を抱いていた。
肩口で小さなタトゥーが白い肌に栄えている。
アジアの文字だと言っていた。
この一字に大層立派な意味があるらしい。
私も彫ろうかなと言ってみるとあんたはやめときなと笑われた。
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