「とーせんぼとーせんぼ」
平べったいモノが歌いながら行く手にはだかった。
バス停へと向かう毎朝の道すがらで、
その平べったいモノはひょこひょこと目の前に現れた。
辺りにはいつも通りに人影はない。
ただなんとなく、
ちちちとさえずる小さめの鳥が多いような気がした。
切ったばかりの髪をなでる風が冷たく澄んでいる。
薄曇りの空を透かす朝の陽が心地良い輝度で眩しかった。
太陽はすっかり低くもう秋である。
まわる季節に目に映る様相が徐々に変われども、
早朝特有のスタートという雰囲気が飽きる事なく背中を押した。
今日も一日がんばりましょう、ふつふつとそんな気にさせる。
平べったいモノは薄いピンクのようなオレンジのような、
強いて言えば「はんぺん」だった。
話に聞いていたよりも小さくて厚い。
そしてその声のかわいさにアンバランスな目つきの悪さが妙な親しみをおぼえさせた。
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