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今日も地球がまわるからワタシはぐるぐる夢をみる、、 ふわふわ浮かんだ妄想を短編小説に込めました、、ユメミルアナタへ愛を込めて☆             
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あ。
次に聴くポッドキャストを左手で探りながらiPodの画面を見ていると、
ブレーキを握る右手の甲にぴとりと衝撃を受けた。
雨。
杉咲都子は交差点で信号待ちをしていた。
番組冒頭の聞き慣れたコマーシャルを早送りしながら空を見上げると、
切り過ぎている前髪の先にもうひと粒、すかさず自慢の眉毛にもぴとり。
雲が散れて春らしくぴかぴかと澄んでいたはずの空がいつの間にやらずんと重かった。
急に現れた雨雲が空一面に鈍い色で重苦しい模様を描いている。
杉咲都子はむき出しで鞄にぶら下げているiPodを濡らさぬようホルダーごと中に入れた。
回送の路線バスが何台も通過する。
前カゴでスーパーのポリ袋がポっポっと大粒の雨を弾いていた。
洗濯物。
目の前を通り過ぎるバスの運転手はみんな若かった。
心が慌ただしい。
ベランダに干されている洗濯物たちに脳を完全に支配されていた。
連なった空っぽのバスの最後のうしろ姿を見送ると杉咲都子は両手を緩めてブレーキを開けた。
信号が変わるのを待たずにぐいとペダルに体重を乗せる。
横断歩道の中間の段差で今日の買物が小さく跳ねた。
飛沫。
ようやく信号がアオに変わりささやかな安堵に杉咲都子の自転車はぐんと加速した。
駅前から住宅地への短い賑わいがわらわらと足早である。
方向不定の雨風が自転車を揺らした。
嵐。
巨大なエネルギーの到来する予感に、
自分の内側がざわざわざわざわと騒ぎだしているのが可笑しかった。
風に乗った大粒の雨がむき出しのおでこを叩く。
「はるのあらし」と心で呟いてみると杉咲都子はふふふふと笑っていた。

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Edit by : Tobio忍者ブログ│[PR]