小さなライオンが搬送中に逃げ出したというニュースを聞きながらシリアルを食べていた。平和だ、などどとぼんやり思いながらスプーンをゆっくりと動かしていると。どうやらこの近所で起こったらしく、早速、携帯がけたたましくメールを着信した。
ノンからだった。
時田登希夫はボウルに残るブランチをかき込むとテレビを消した。
洗面を手早く済ませるとクローゼットの前に立った。
寝間着を脱ぎながら前回ノンと会った時の服装を思い出そうとして断念した。
ノンからの呼び出しが久しぶり過ぎて忘れていた。
先日買ったゴム底の下駄から全身を合わせると、“ハリキリ過ぎてない” 悪くないコーディネイトに落ち着いた。
部屋を出る。
外は今日も夏だった。
時田登希夫はもう鼻の下に汗をかいている自分に滅入った。
地球がピンチだピンチだとあまりにうるさいので窓をぴしゃりと閉めた。
超能力ガムを早速噛んだ。
チリチリパーマの双児を先頭にこどもが大手を振って闊歩する。
大通りは封鎖され歩行者天国となっていた。
虎に股がって来たチビクロと呼ばれるこどもが注目されていた。
よく見ると虎ではなく大きな猫だった。
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