連れの知り合いがやっているというさして特徴のない居酒屋に連れてこられていた。初めてのデートで使ってはならないお手本のような特徴のなさだった。こりゃ、と思うような大切な恋に一方的に終止符が打たれてからどうも軽薄になっている。それがいかんとも思わないが、軽薄とはこれがなかなか忙しいものだった。
つかみ合いのケンカというのを生で初めて見た。それが連れというのはずいぶん恥ずかしく、こいつとは別れようとささやかに思った。新宿はまだ 21:48。
大した人集りはできなかった。遠目に冷笑するカップル。このエリアでケンカなど日常なのだろうか。連れへの言い訳を考えついた。大通りの信号が変わったのを機にこの場を離れた。さて、終電までの90分をどう過ごそうか。
ぽつぽつと歩いていると、すれ違い様に声をかけられた。