02_06.3

「チチチチチチチチ」

曲の切れ目に鳥の声が聞こえた。
持っていた傘を下げてみる。
雨は完全に上がっていた。
信号を待つほぼ全員の視線が上がっている。
見上げてみると虹が出ていた。
携帯を構える。
破廉恥なシャッター音を久々に聞いた。
虹はうまく写っていない。
保存してから群衆より一歩遅れて横断歩道に踏み込んだ。

「チチチチチチチチ」

交差点の中央でさっきの声がする。
どうやら声は直接私の中に話しかけていた。