「アレってどこだ」
一人の女子がパピコを口から外して言った。
話すと怒鳴るの中間くらいの口調である。
言葉はしばらくの間、ゆらゆらと広い空を漂っていた。
西の空にはまだ薄く夕が残っている。
その手前では都県を繋ぐ大橋の上を大小の車が懸命に走っていた。
テールランプだかブレーキランプだかの赤い点がボヤけながら細く連なっている。
雲間に覗くグラデーションがこの季節特有だった。
次の瞬間には変わっている空が単に美しい。
この夏こそ、あの人をここに連れてきたいな、などと思ってみた。
「あ、ホラ あそこ」パピコのトーンが上がる。
ベクトルの川向こうに私も目を細めてみた。
遠くのビルだかマンションだかのてっぺんに小さな火の花がぽんと咲く。
遅れてとんとんとやさしく爆発音が届く度に、
パピコの女子がハイ来たハイ来たと嬉しそうにはしゃいでいた。
PR