「もうはじめんのか」
文庫は開いたままで声のする方を振り向いたが誰もいなかった。
更地がそこにあるだけである。
昨日からは一日分、
工事終了からは今日でちょうどひと月分ほったらかされた空間で、
砂利や小石大石がそこでじっとしていた。
陽当たりの良好な部分では早々に雑草がたくましく群を成しだしている。
腰を上げようと重心をずらすとパイプ椅子がみしと泣いた。
入社して半年が経ち、身も心も預金もすり減らしてきた反面で体重だけは順調に増加している。
やれやれ
二時間振りに立ち上がると心地良く軽い目眩がした。
こった尻を叩き、っお、とひとつ大きく伸びてみる。
奥底から温い欠伸が出た。
昼過ぎの駅前通りは今日も閑散としている。
何もかもがもう少し休憩中、そんな雰囲気だった。
なんだか気怠くも健やかな平和が秋の口で充満している。
平日の午後のはじまりのそんな時間の中にいた。
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