「サクラノコロニアイニユキマス」
短い便りを読み返し再び小さく折り畳んだ。
朝から幾分暖かいので木陰でサカナを食んでいる。
今日もカノジョを待っている。
ずっしりと枝につく花を見上げて、マンカイ、マンカイ、と人間の真似をして口に出してみた。
ときよりの風が少し強い。
枝が揺れてわさわさと花のカタマリが上下する。
花びらが1枚。
ひらひらひらと鼻先を抜けて水に落ちた。
川底から見上げるよりもずっと白くて不思議。
枝が動き陽が洩れる。
少し眩しい。
ぽかぽかと暖かい。
この時季は上に出ないから色々が不思議。
カノジョを待たないから上に出ないから。
寝転んで、時々幹に手を伸ばしては剥がしてかじる。
遠くを見る。
新宿のビルが今日はくっきりと見えた。
一番高いビルにお日さまがかかる頃、カノジョは来るのだった。
遊歩道から水の縁へと緩やかな傾斜に沿ってやわらかい風が抜けた。
ふわと眠気がもたぐ。
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