「あ」
不意にアノヒトの気がそれて大相撲夏場所の総括は中断する。
どうしたのと聞く前にアノヒトの後ろで雷鳴が轟いた。アノヒト相撲もすきなんだ。ふむふむといつもながら熱の入った言の話を愉しんでいるとどうやらカミナリさま登場でアノヒトの頭からオスモウさんが押し出された。次は七月で名古屋で注目はコトミツキでその訳は、その訳はー、、一秒の沈黙がアノヒトとワタシを一層に繋ぐ。
「ちょっとごめ、、待っ」
アノヒトの言葉にくっ付いて立ち上がる気配も受話器から伝わった。
なあになあにとカワイイ声を出す代わりにひそひそとワタシは向こう側の音を聞く。
間もなく、あちらより神の鳴りを再び受信した。
ためているって風なやや小さな奥深いごろごごろごである。
ワタシは受話器を握ったまま目を閉じた。
アノヒトのマンションを想像する。
アノヒトはどうしても雷が見たくなっちゃった。
今、アノヒトは部屋のあの位置からあの窓に移動して外を眺めている。
ワタシは部屋の電気を消して息を詰めた。
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