面倒になったのですべてを投げ出して大の字に寝転がった。放り投げた携帯電話はまだ鳴っている。裏返り枕の間に顔をうずめた。両手でがっしりと顔を挟み込む。真新しいシーツと枕カバーが冷たく肌にあたる。土の中にいる様な
気がした。
メカにはどうも疎くて、とかなりやんわりと言ったつもりだったが、語気に「興味ねぇんだよ」が滲んでしまったのか、若き工学博士は最新の携帯電話についての講釈をストップすると、あからさまに幻滅の表情を浮かべた。2人して目線を下げるとまるで漫画の様に絶妙なタイミングで“鹿威し”がかぽんと鳴った。
メニューが渡された。表紙に小魚が描かれている。メダカだろうか。頭上の吹き出しには手書き風に「めにゅ〜」と印刷されていた。目の前のカレの字に似ていたがその事は黙っておく。分厚い表紙を開くとただ1枚だけ紙が入っていた。
めだか屋に意を決して入った。駅までの帰り道、なんとなしに別の路地を入ると小さな看板が掲げられていた。めだか屋。メダカを売っているわけではない事は分かっていた。
目一杯背伸びをした所でびりと音がした。
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