「なんか人があまりいないですね つか誰も」
聞こえなかったのだろうか、のそっのそっと巡査は奥に引っ込んで行った。
いきなり彼に出迎えらて動揺している。
お目当ての犬のお巡りさんと難無くいきなりのご対面だった。
犬のお巡りさんはこの春の人事異動でこの町にやってきた。
降って湧いた十数年振りのビックニュースである。
マスコミが滞在し野次馬が集まって一ヶ月大いに盛り上がった。
そうですね、
そう言いながら犬のお巡りさんは持って戻って来た。
茶をのせた盆を毛むくじゃらの両腕で慎重に運んでいる。
どうぞと丁寧にさし出された盆から私はどうもと茶碗を受け取った。
犬のお巡りさんは菓子の乗った鉢を机のやや私寄りに置いて盆を引く。
何せゴールデンウィークですから、
と続けるとでんと目の前の椅子に座った。
月が替わった途端にごった返していた見物客は町からぴたりといなくなった。
ゴールデンウィークに入り今この町はほぼモヌケノカラになっている。
「ぁあ、ソラもアオいよ、同じ同じ」
空は曇まっている。
ウソツキは高速で流れてゆく白い雲を仰ぎながら、
せめてむなしさが伝わらぬようにと携帯電話を左手に持ち替えた。
「そう それでさつきって読むのよ」そろそろ切りたいなと思っていた。
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