「ペン、、いいっすか」
斜め前の席のクルクルパーマが振り向いた。
サークルの合同説明会は時間になっても開始されない。
入学してまだ間もないのにそろそろこのルーズさにも慣れてきていた。
そんなものかもしれない。
授業が開始され新入生のテンションはますます高かった。
ざわめきが歴史ある大講堂を反響する。
屈服していた。
まだまだ脆弱な集中力が疎ましい。
両の手は目の先で文庫本を支えるばかりで、
席に着いてからまだ一枚も頁をめくっていなかった。
だって指令が出てないし、
読めてないから出せないし、、
ボールペン。
そう言いながらクルクルパーマは細い手首をちょんちょんと揺らし宙を書いた。
慌てて落としそうになった文庫を膝の上に伏せる。
足下のバックに手を伸ばし手帳を探った。
がやがやとお調子のグループが登場した。
「なにまだ始まってねーじゃん」
ヘッドホンを首にかけたきたない髭の男が意外に高い声を張る。
いい声ではあった。
周りの男女が意味もなくけらけら笑っている。
彼らが壇上の前をどやどやと通り過ぎる時クルクルパーマがすっと右手を上げた。
きたない髭の男が口許をゆるめながら同じ様に右手を上げる。
なんだ、友達いんじゃん。
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