「ペン、、いいっすか」
斜め前の席のクルクルパーマが振り向いた。
念が通じる。
キラり。
新入生部活動合同説明会の開始予定時刻が過ぎた。
窓の外では昼間の初夏の陽射しがいつの間にかやわらいでいる。
すっかり葉になった桜を放課後の風が大きく揺らしていた。
「、、ボールペンとか」
そう言いながらクルクルパーマは細い手首をちょんちょんと揺らし宙を書いた。
慌てて落としそうになった文庫を机の上に伏せる。
足下のバックに手を伸ばし手帳を探った。
生徒はどんどん集まっているが何かが始まる気配はなかった。
俗に名門とうたわれているこの学校でも、学生運営のイベントは普通に程良くルーズ、という事なのだろう。
ようやく勝ち取った場所だった。
あんなに憧れて入ったのになんだか少し違う。
嫌気とは少し違う、目にも見えない程些細な何かが薄く薄くつもっていくような「変な感じ」が続いていた。
入学式、健康診断と終えて今週から授業が開始されだすと新入生のテンションはますます高い。
ざわめきが大教室を反響する。
屈服していた。
脆弱な集中力が疎ましい。
集中力というより、度胸の問題?
この学校でまだ誰一人私を知る者はいない。
何これ、不安。
少し焦りますよ、実際。
両手は文庫本を目の先で支えるばかりで、
まだ一枚も頁をめくっていなかった。
だって指令が出てないし、
読めてないから「めくりなさい」とは出せないし、、
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