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今日も地球がまわるからワタシはぐるぐる夢をみる、、 ふわふわ浮かんだ妄想を短編小説に込めました、、ユメミルアナタへ愛を込めて☆             
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兵士にマルボロの箱を渡すとようやく無表情の口元がぴくと持ち上がった。

兵士の眼光は依然として鈍い。
瞳はどこまでも濁っていた。

兵士の目は死んでいた。
そしてそれは見覚えのある “目” だった。。


時田登希夫はこの逃避行がそろそろ終わる事を分かっている。
施設の塀を越えてから数日が経っているはずだった。
充電はもちろんされていない。。


すぐに兵士は親指で蓋を持ち上げてちらと中身を確認した。そのまま一歩下がると目の前に立つ “異物” 時田登希夫をじっと見据える。時田登希夫の手の平はすでにじっとりと汗をかいていた。幾度対しても “むき出しで” 武器を持つ者には慣れる事はない。時田登希夫は目のやり場を求めて視線を下げた。兵士の足下をサソリの様なクモの様なヤツが這っている。履き古された革のサンダルから見えるつま先は石化していた。固唾を呑んでブーツの中の自分の指を動かしてみる。平静を装ってゆっくりと視線を戻した。マルボロを胸ポケットに押し込むと兵士はライフルの先で小さく合図する。時田登希夫が急いで荷物を背負うと兵士は無言のまま歩き出した。


審査を待つ長い列が動く気配はなかった。
兵士と時田登希夫はそれを横目に前へと進んで行く。
停滞する長蛇はじっと疲れ切っていた。
すれ違い様に時田登希夫にだけ “目” は追って来る。
それは “兵士の目” だった、投げられる冷えた視線の元でその全てが一様に死んでいた。


見上げる空はこの地に着いてから変わらない光景だった。
太陽がどこにあるのか分からない。
一面の薄い雲は何かを逃がさぬ様にか、あるいは侵されぬ為にか決して晴れる事なく空を覆っていた。
腕時計はとうの昔になくしている。
時田登希夫の脳がとりあえず認識していた。
身体の記憶と明るさの加減を感知してどうやら今ココは昼間である。。

前を行く兵士が足を止めた。振り向いてここで待てという合図をする。辺りには何も無かった。“審査” が行われるはずのそれらしき建物もない。時田登希夫のリアクションも待たずに兵士は歩き出していた。すぐに背中は小さくなってやがて群衆に溶けている。審査を待つ列はいつの間にか “群れ” となっていた。荒涼とした空間に “それ” は広がっている。

いったい何を待っている
審査
審査ってなんだ
いったい審査ってなんだよ

時田登希夫は自転車のスタンドを立ててバックパックを地面に下ろした。

兵士は戻ってくるのか
間に合うのか
そろそろバッテリーは切れる
そして、、施設に回収される
全ての終り


時田登希夫はその場に腰を落とした。
バックパックに体重を預ける。
時田登希夫もやはり疲れていた。
目線が低くなり “待つ群れ” に自分が浸っているのを認識する。
そしてぞっとした。

時田登希夫は思い出した。

あの兵士の “死んだ目” は自分の目だった。

列から投げられた “死んだ目” も自分の目。
毎朝、鏡の中にあった自分の目。。見覚えのある自分の目。。
施設に縛られていた時田登希夫は兵士と同じ濁った瞳で世界を見ていた。
今はどうだろうか

時田登希夫は両方の手で目を覆ってみた。
視界を覆うように、何かを確かめる様に、、指の先で手の腹で目蓋や目尻を愛撫する。

今はどうだろうか


ぴたと空気が止まる。
“待つ群れ” の澱んだ気が消えた。
目を開く。
あの兵士がただ1人、時田登希夫の隣りであぐらをかいていた。

兵士は胸ポケットからマルボロの箱を取り出すと親指で蓋を持ち上げる。見た光景だった。そこには “入っていないはず” のタバコを1本取り出すと火をつけた。不機嫌そうに短く浅く煙を吹かす。時々、サンダルの先からのぞく指にタバコの火を押しあてては笑みを浮かべた。

時田登希夫は兵士をじっと見ていた。
かつての “恐れ” はない。

根元まで吸い切ると最後につま先で丁寧に火を消した。再び胸ポケットを探り吸い殻を箱に戻す。そして兵士は骨と皮だけの腕を真直ぐに伸ばし遠くを指差した。その先にドアがあった。

時田登希夫は立ち上がりバックパックを背中に背負うと自転車のストッパーを跳ね上げた。
何かを確信し扉を目指す。

あれか


ノブに手をかけると重厚な鉄のドアは音も無く簡単に開いた。
時田登希夫は迷わずに進む。
通り抜けるとゆっくりと鉄扉は自分で閉まり、ずしんという重い音で空が晴れた。
一面の雲が一瞬で散ってしまうと黒い宇宙がむき出しになっていた。
夜でもない朝でもない初めて見る宇宙(そら)だった。
むき出しの宇宙だった。。


時田登希夫の目の前には道があった。
一直線に延びるアスファルトの先は見えない。
時田登希夫に選択肢はなかった。
時間がない。
バックパックを捨てブーツも脱いで裸足ままにサドルに股がった時、背筋がじっと熱くなった。
強い存在感に思わず振り返ると地球だった。
ぽっかりと青い惑星(ほし)が浮かんでいる。
かつて何度もテレビや写真で見た地球がそこにあった。
小さな地球がひっそりと黙っている。
果てなき闇に美しく浮いていた。
じっと時田登希夫を見ている。

今、どんな目をしてる。。

時田登希夫はそんな事を想像してみようともしてやめた。
そして、地球に背をむける。
わざとギラギラと目を見開いてみて裸足の足に力を込めた。
母に背中を見守られながら、どこまでも力強くペダルを踏み込んでいく。

そして、
やがて、
ゆっくりと時田登希夫の電池は切れた。
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